ジオマーリン

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IEx.ec RLC の現状と将来

今日はマイナーコインの紹介です。

 

IEx.ec RLCというコインがBittrexだけに上場しています。

このプロジェクトは

クラウドコンピューティングのサービスをブロックチェーンで行うことでコストを下げること

を目指しています。簡単にいえば、中小企業が集まってAWS作ってしまおう」ということです。

 

クラウドプラットフォームの複雑さを知っている人も知らない人も「難しそうなことしそうだけど出来るの?それ」と考えるかもしれません。

 

背景

提案者のHaiwu He教授はついこの間、最も創造的な中国人100人に選ばれました。

 

もともとクラウドコンピューティングの分野では著名な方で、

Haiwu He : Main / Haiwu He, Ph.D : browse

フランスのINRIA(フランス国立情報学自動制御研究所 - Wikipedia)の協力のもと、このIEX.exプロジェクトを立ち上げたそうです。

そのせいか、フランスの外務省も協賛に入るようになり、フランスの国家のプライドがかかったプロジェクトになっています。

 

事業内容について

さて、このプロジェクトの具体的な未来図はなにかと言えば、Amazon Web ServerやMicrosoft Azureのようなサービスをもっと低コストで実現することだと言えます。

実はこのクラウドコンピューティングはここ最近で巨大化している市場であり、

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amazon資料出展)

AWSだけでもこれほどのサービスがあるのです。

簡単に言えば「自社にコンピューターなくてもAWSに来ればなんでもできる」みたいな状況なので、Amazon社の売上の6割を占めるまでになっています。SE・PGで無い方からすると、かなり意外かもしれないですね。しかし、これなしではAmazonは赤字なのです。

 

IEx.ex提供のこの図を見て下さい。よく知らない中小企業が集まっていると思うのですが、おそらくコレが狙いです。

中小企業が集まってAWS作ってしまおう」ということです。

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(iexec rlc whitepaper 出展 http://iex.ec/wp-content/uploads/2017/04/iExec-WPv2.0-English.pdf

ブロックチェーンは「知らないコンピューター同士が約束する」ことができるので、利益分配も正確にできますし、新規参入による協業もブロックチェーンに入るだけです。やりたいことはかなり明確で、ポエムICOとは一線を画すと考えられます。割と厳しめの評価を下すこのシリーズでもRLCは好意的でした。

iEx.ec — Ethereum-based distributed cloud – Crypto Judgement – Medium

 

時価総額について

さて、肝心の時価総額ですが、8月14日付で約60億円です。これを大きいととるか、小さいととるかは分かりませんが、比較対象として

 

クラウドサービスが現時点で市場規模10兆円があり、伸び続けていること

japan.techrepublic.com

 

②ライバルのGolemの時価総額が現時点で300億円あること

 

を多くの投資家が指標にしています。

 

RLCへの投資の性質について

他と違った性質がいくつかあります。

①投資家の心理よりも事業の進展の影響が大きい

 これは”今のところ”という注釈がつきますが、先ほどの説明通り、中小企業が集まってBtoBのためのシステムを構築するブロックチェーンなので、個人投資家にとって馴染みがないトークンです。ゲームに使うGamecreditやエロサイトに使うDecentみたいな接点がないので自然と知名度も低いです。これはAWSが巨大な事業なのに、普通のAmazonサービスより全然知名度が低いのと同じ理由ですが。

つまり「みんなが集まって値段が上がる!」みたいな仮想通貨のテンプレではなく、今のところ「どの大企業と契約がとれて、それがどの大手投資企業に評価されるか」のほうが値動きに関わっていると思われます。

7月にIexecはEthereum Enterprize Aliance(イーサリアム企業連合)のメンバー入りをしました。

これは、多くの企業と協業することにとって決定的な効果があると考えられます。

 

②広告をあまりしない

 これはSlackでも怒り狂っているひとがいたのですが(笑)、大企業との協業がベースの事業戦略である以上、個人に対する広告・メディア露出でコインの値段を釣り上げるメリットが今のところあまりないことに理由があります。IEX.ex使うのにRLCコインが必要ですが、その値段が高かったら企業側も協業しにくいので、おそらく彼らはコインの値段は適性価格であって欲しいと思っていることでしょう。長い目でみての利益がチームの狙いで、バブルに乗ることではなさそうです。

 あと、これは個人的な勘ですが、プライドの高いチームなので、プロダクトが出ていない状況でコインの値段がやたら上がったり、過大広告をしたり、メディアに持ち上げられるのを嫌いそうな印象です。11月にプロダクトリリースですから、その後にチームがマーケッティングに力を入れることを期待しています。

 

次はUbiqかAuger・Gnosisあたりの調査を公開しようかな。